
はじめに|スマホは綺麗なのに、一眼レフでは変な色…?その理由はホワイトバランスにあった!
「あれ…?一眼レフで撮ったら顔が青白い…」
「料理が美味しそうに見えない、黄色すぎる…」
「夕焼けが綺麗だったのに、写真は真っ白…」
こんな風に、「撮った写真の色がおかしい」と感じた経験はありませんか?
この“色味の違和感”の多くは、ホワイトバランス(White Balance/WB)の設定ミスや理解不足によるものです。
でも裏を返せば、ホワイトバランスを理解するだけで、写真の色をコントロールできる力が手に入るということ。
本記事では初心者の方にもわかりやすく、
- ホワイトバランスとは?
- なぜ写真の色が変になるのか?
- シーン別の色の失敗とその対処法
- スマホと一眼レフで色が違う理由
- RAW現像での色調整の自由さ
といった内容を丁寧に解説していきます。

ホワイトバランス(WB)とは?|「白いものを白く写す」カメラの色補正機能
カメラは、光の「色」によって白いものが青くなったりオレンジになったりしてしまわないように、光源の色を自動または手動で調整します。この機能がホワイトバランス(White Balance、略してWB)です。
たとえばこんな状況、ありますよね?
- 電球の下だとオレンジっぽく見える
- 蛍光灯の下では青白く見える
- 曇りの日はなんとなく写真が冷たく感じる
これは、光源によって色温度が違うからです。

色温度とは?|光の色を数値で示す「ケルビン(K)」
ホワイトバランスの調整は、色温度という単位(K=ケルビン)で行われます。
色温度(K) | 色の傾向 | 主な光源の例 |
---|---|---|
2500〜3500K | 暖色(赤〜オレンジ) | 白熱電球、キャンドル |
4500〜5500K | 中間(自然な白) | 太陽光、LED |
6000〜7500K | 寒色(青白) | 曇り空、日陰、蛍光灯 |
カメラはこの数値をもとに、見た目に近い色に補正しようとします。
しかし、オートホワイトバランス(AWB)がうまく働かないシーンでは、色が不自然にズレてしまうのです。
【よくある色のズレ】ホワイトバランス設定ミスの具体例
シチュエーション | 色のズレ方 | ありがちな原因 |
---|---|---|
室内の電球下 | 全体が黄色〜オレンジになる | AWBが暖色に引っ張られる/色温度が低い |
蛍光灯下 | 顔が青白く見える | 光の偏り+演色性の低さ |
曇り・日陰 | 全体が青っぽく、冷たい印象に | 散乱光による寒色化/過剰補正 |
夕焼け | 赤やオレンジが白く飛ぶ | AWBが赤みを打ち消してしまう |
シーン別:写真が「変な色になる」原因と正しいWB設定
シーン①:室内撮影が黄色くなる理由と対処法
よくある悩み
カフェや雰囲気のある照明で撮った写真が、全体的に黄色〜オレンジにかぶってしまう。
原因は?
- 白熱電球や暖色系LEDは色温度が2700〜3200K程度と低く、赤みが強い光を出します。
- オートWBではこの色をうまく中和しきれず、「色かぶり」したような写真になるのです。
- さらに、写真内に「白」や「グレー」がないと、WBが正しく働きにくいのも原因。
解決策
- WB設定を「電球」または「タングステン」に変更
- 色温度を手動設定するなら「3000〜4000K」前後
- RAW撮影しておけば、後から色補正も可能
- ホワイトバランスカード(グレーカード)を使って基準を明示するのも有効です

シーン②:蛍光灯下で青白くなる理由と対処法
よくある悩み
会議室や学校など、蛍光灯の下で撮った写真が、人物の顔色が青白く、冷たく見える。
原因の本質
- 蛍光灯の光は、見た目には白くても、実際には青〜緑系に光の成分(スペクトル)が偏っているためです。
- さらに、演色性(CRI)が低いと、肌の色や赤系の色味がきちんと再現されないことがあります。
【補足】演色性(CRI)とは?
「光源が、物の本来の色をどれだけ忠実に見せられるか」の指標。
0〜100で表され、CRIが90以上なら自然な色再現が可能。
一般的な安価な蛍光灯やLEDは、CRI 70前後で色がくすみやすいです。
解決策
- WBを「蛍光灯」または「曇天」に変更して、赤みを足す
- 色温度は「5000〜6000K」が目安
- RAW現像時に**HSL(色相・彩度・輝度)**で肌色(赤・オレンジ)を強調
- グレーカードでホワイトポイントを確保しておくと、色補正がスムーズ
シーン③:曇りや日陰で写真が青くなる理由と対処法
よくある悩み
曇りの日に屋外で撮った人物写真が、全体的に青っぽく、寒々しい印象になる。
原因は?
- 曇り空や日陰では、直射日光が遮られ、空からの「散乱光」だけが届く状態に。
- この散乱光は青色の波長が強く、色温度が6500K以上の寒色系の光になります。
- AWBが青かぶりを打ち消そうとするが、逆に過補正になって色が薄れたり冷たく感じることも。
解決策
- WBを「曇天」「日陰」に変更
- 色温度を手動で「6000〜7000K」程度に設定
- 人物が主役の場合、あえて暖かみを加えると親しみやすい雰囲気に
シーン④:夕焼けが真っ白に飛ぶ理由と対処法
よくある悩み
赤く染まった空を撮ったのに、赤みが抜けて、真っ白に近い味気ない写真になってしまう。
原因の正体
- 夕焼けの赤やオレンジは、空気中の粒子によって青い光が散乱され、赤系の波長だけが残った結果。
- しかし、AWBはこの赤い光を「異常」と判断してしまい、白に補正して打ち消してしまうのです。
解決策
- WBを「太陽光」に固定、または手動で「6500〜7500K」に設定
- RAW撮影を活用して、赤みを残すように現像
- “夕焼けはAWBで台無しになる”と覚えておくと失敗しにくいです

スマホと一眼レフ、写真の「色」の違いとその理由
なぜスマホはいつも“良さげ”に写るのか?
最近のスマホはAI補正が非常に優秀で、誰がどんな環境で撮っても「ある程度きれいに仕上がる」ように設計されています。
比較項目 | スマホ | 一眼レフ/ミラーレス |
---|---|---|
WB補正 | AIによる自動最適化 | 光の種類に応じた演算処理 |
撮影後処理 | 彩度・明るさ・肌補正あり | 基本的には補正なし(RAW保存可能) |
色の一貫性 | AIが“映える色”を演出 | 設定と光源に応じて変化 |
自由度 | 任せるだけでOK | 自分で調整して表現可能 |
スマホは“仕上がった写真”、一眼は“自分で作る写真”
スマホのカメラは、「見た目が良いことを最優先」にした設計です。
撮影時だけでなく、撮影後にもAIが
- 肌を明るくなめらかに補正
- 空や海をより青く演出
- 食べ物を鮮やかに見せる
といった加工を自動的に行い、「見映えする写真」に仕上げてくれます。
つまり、スマホで撮れる写真の色は“演出された色”であり、実際の光や空間の色とは少しズレていることもあります。
一方で一眼レフやミラーレスカメラは、「その場の光を忠実に記録する」ことを目的とした設計です。
その分、WB設定や露出が適切でないと、
- 写真が地味に見える
- 肌が青白く見える
- 色の印象が薄く感じる
といったことも起こりやすいのですが……
逆に言えばそれは、「素材としての純度が高い」とも言えるのです。
スマホにできない“一眼の自由”とは?
スマホでは、AIが「こう見せたい」と決めてしまうため、自分の意図が反映されにくい側面もあります。
一方で一眼なら、「どう見せたいか」を自分で決めて、それを写真に反映できるのが最大の魅力です。
一眼レフのホワイトバランスの強み
- RAW撮影で後から好きな色味に自由に調整可能→ 撮影後、「もっと暖かい雰囲気にしたい」「夕暮れの空気感を残したい」など、自在にコントロールできます。
- 光源や撮影環境に応じて「意図的に」色を決められる→ 実際の見た目に忠実にもできるし、逆に演出も可能です。
- 商業写真や動画など、一貫した色表現が求められる場面で信頼性が高い→ 同じWB設定で複数カットを統一したトーンに整えられます。
- 感情、空気感、記憶を“色”で表現できる→ 単なる記録写真ではなく、作品としての表現が可能になります。
なぜ一眼を使うのか?
スマホでも写真は撮れるし、キレイです。
でも、“あなたの色表現”を反映できるのは、設定が自由で編集に耐えられる一眼です。
- スマホは「お任せで映える色」
- 一眼は「自分の意思で作る色」
一眼レフを使う理由は、まさにこの“自由とコントロール力”にあります。

スマホと一眼、どちらも正解。でも「色を創る楽しさ」を知るなら一眼へ。
比較軸 | スマホカメラ | 一眼レフ/ミラーレス |
---|---|---|
手軽さ | ◎ 簡単に綺麗に撮れる | △ 撮影準備が必要な場面も多い |
色表現 | AI任せ/演出寄り | 自分で意図して設計可能 |
自由度 | △ 自動補正が強い | ◎ RAW・WB調整で無限の表現力 |
仕上がり | “すぐ映える”が強い | “じっくり作る”が楽しい |
まとめ ホワイトバランスは「色を伝える表現技術」
- スマホは“キレイに整った写真”をくれる
- 一眼は“自分の感情を色にして表現する”自由をくれる
ホワイトバランスの知識は、その表現を支える大切な技術です。
自分の目で見た光を、写真に「自分の言葉」で翻訳する。
その一歩を踏み出すだけで、写真の楽しみは何倍にも広がります


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