
はじめに:なぜフィルターが必要なのか?
写真を始めたばかりの方の多くが、「フィルターって本当に必要?」「レンズの前に何かつけると画質が落ちない?」と感じるかもしれません。結論から言えば、適切なフィルターを選んで使えば、むしろ写真は劇的に良くなります。
フィルターはただの「アクセサリー」ではなく、光をコントロールして、作品表現を完成させる重要なツールです。
この記事では、特に初心者が効果を体感しやすいPL(偏光)フィルターとND(減光)フィルターにフォーカスし、それぞれの仕組みや効果、選び方、さらには併用方法まで、徹底的に解説します。
PLフィルター(偏光フィルター)とは?写真がクリアに、色が濃くなる
PLフィルターは、反射を取り除き、色彩とコントラストを向上させるフィルターです。水面やガラスの反射を除去し、空や葉の色を濃く鮮やかにすることができます。
どんな仕組み?
PLフィルターには偏光膜が入っており、光の波のうち特定の方向(偏光)をカットします。これにより、表面反射(テカリ)を取り除くことができます。
原理と素材
- 偏光膜(Polarizing Film)を光学ガラスに挟んだ構造
- 特定の偏光方向の反射光を除去
- 多層コーティングにより高透過・反射防止を実現
使用前・使用後の違い
シーン | フィルターなし | フィルターあり |
---|---|---|
湖面 | 白く反射し中が見えない | 水中の石までくっきり |
空 | ぼんやりした青 | 濃く、雲とのコントラストが高まる |
葉 | テカって質感が飛ぶ | 深い緑で立体感が出る |
ガラス | 映り込みが強い | 中が透けて見える |
特性と効果
効果 | 内容 |
---|---|
反射除去 | 水・ガラス・葉の表面の反射を取り除く |
色の強調 | 空の青、葉の緑が濃く鮮やかになる |
コントラスト向上 | 空と雲、樹木などの分離が明確になる |
※効果はフィルターを回転させることで調整可能。光の入射角が約30〜40度のときに最も強くなる。
適したシーン
- 風景(湖・空・森林)
- 建築(ガラス建築・ショーウィンドウ)
- 商品撮影(光沢商品の反射除去)
- 映像(肌のハイライト抑制など)
注意点
- 広角レンズでは偏光効果が画面内でムラになる
- 光量が若干落ちる(約1〜2段)
- 安価なPLフィルターは「色かぶり」や「ムラ」が出るリスクあり
おすすめPLフィルター
NDフィルターとは?光の量を減らしスロー表現や開放F値を実現

NDフィルターは、明るい状況でもシャッター速度や絞りを自由にコントロールできるフィルターです。
NDフィルターの仕組み
NDは「Neutral Density」の略。色に影響を与えず光の量を抑えるフィルターです。
原理と素材
- 濃度の異なるグレーの光学ガラス
- 均一に光を減光(理想は色変化なし)
- 高品質モデルは色再現性が高く、ムラが少ない
NDフィルターの種類と減光量
種類 | 減光量 | 主な用途 |
---|---|---|
ND8 | 約3段分 | 軽い減光(ポートレート) |
ND64 | 約6段分 | 日中のスローシャッター |
ND1000 | 約10段分 | 長秒露光(滝・海・雲) |
可変ND | 2〜400段相当 | 動画や柔軟な露出調整 |
使用前・使用後の違い
シーン | NDなし | NDあり |
---|---|---|
滝 | 水が止まって見える | 滑らかな流れに |
ポートレート | 背景までクッキリ | 背景がとろけるようにボケる |
映像 | カクついた動き | 自然でシネマ風の表現に |
特性と効果
効果 | 内容 |
---|---|
減光 | 明るい場所でも露出過多を防ぐ |
スローシャッター | 昼間でも滑らかな動きが表現可能 |
被写界深度のコントロール | 開放F値での表現が自由になる |
NDが必要なシーン
- 昼間の長秒露光(滝・雲・海)
- 街中スナップ(人の流れを消す)
- ポートレート(明るい屋外で開放F値)
- 動画撮影(シャッター速度調整)
注意点
- 可変NDは「Xパターン」や色ムラのリスクあり
- 高濃度NDではライブビューが暗くなるため構図確認が難しい
- 低品質モデルは色かぶりが出やすい
おすすめNDフィルター
PLとNDの併用は可能?そのメリットと注意点
併用することで、反射除去と長秒露光を同時に行えるなど、表現の幅が広がります。
例:水辺の風景
- PLで水面の反射を除去
- NDで水の流れを滑らかに
注意点
- フィルターを重ねるとケラレ(隅の暗部)が発生することがある
- フレア・ゴーストが増加する可能性がある
- 高品質・スリムタイプやマグネット式の使用が推奨される
その他のフィルター紹介(UV・ソフト)
UVフィルター
- 紫外線カットよりも、レンズ保護が主な役割
- 常時装着することで物理的なダメージや汚れを防げる
おすすめ:B+W MRC UV、HAKUBA ULTIMA WR
ソフトフィルター(拡散系)
- 光を柔らかくし、ポートレートや映像に幻想的な雰囲気を演出
おすすめ:Tiffen Black Pro-Mist、K&F Concept ブラックミスト
高透過マルチコート(MRC・HD)とは?
フィルターの性能を決める最重要要素ともいえるのがコーティングです。
- 反射を極限まで抑え、フレア・ゴーストの発生を抑制
- 撥水・防汚性能でメンテナンス性が向上
- 色再現性にも優れる
代表例:B+W MRC、Hoya HD、NiSi Nano、Kenko Zéta EX

ジャンル別おすすめフィルター構成
ジャンル | 使用フィルター | 理由 |
---|---|---|
風景 | PL + ND1000 | 彩度UP+スローシャッター効果 |
ポートレート | 可変ND + ソフト | 開放F値+幻想的な描写 |
映像 | 可変ND + 軽PL | 映像の露出調整+反射除去 |
スナップ | UVのみ | 機材保護と瞬時の撮影対応 |
まとめ:PLとNDを使いこなせば、作品が劇的に進化する
写真が「記録」から「作品」へと変わる第一歩は、光をコントロールすること。PLフィルターとNDフィルターは、そのための最も基本でありながら最も強力な道具です。
PLフィルターで:
反射を取り除き、色と透明感を引き出す
NDフィルターで:
スローシャッターや開放絞りなど、創造的な表現を可能にする
高品質なフィルターを1枚持つことで、あなたの写真表現の幅は間違いなく広がります。
まずはPLフィルターとNDフィルターを使用してみて写真の変化を楽しむ事からはじめて、そこから自分の作品に生かしてみて下さい。


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