




はじめに:カラー調整は“見た目を整える”だけではない
写真の現像・調整プロセスの中でも、
「カラー調整」は感情や空気感、思想までも映し出す、いわば“写真家の声
ともいえる工程です。
中でも、「ホワイトバランス(WB)」「HSL」「カラーバランス」「トーンの設計」「引き算と足し算の思考」などは、写真の完成度と表現力を大きく左右します。
本記事では、初心者〜中級者カメラマン向けに、写真の色を自分らしくコントロールするための「カラー調整の基本と応用テクニック」を丁寧にまとめました。
1. 色を見る力を鍛える – 観察が表現力の第一歩
光と色の関係を日常的に観察しよう
色は「見えるもの」ではなく、「感じるもの」です。
写真において“色”は単なる視覚要素ではなく、空気感や温度、時間、感情までも伝える手段になります。
- 朝・昼・夕方、晴れ・曇り・室内など、光源によって色は劇的に変化します。
- 「どんな光が、どんな色に変わるのか?」を観察するクセをつけましょう。
自分の“好きな色”を言葉にする
「ミルクティーのような茶色」「くすんだ青」「朝の白っぽい光」など、
自分が心惹かれる色を言語化することが、色のセンスと表現力を養う鍵です。


2. ホワイトバランス(WB)の基礎と応用
WBとは?
ホワイトバランスとは、「白を白として再現する」ための色温度調整機能。
光源によって写真全体の色温度(暖色・寒色)が変化するため、WB調整は色表現のベースとなります。
- 太陽光 → やや暖色
- 蛍光灯 → 緑がかる
- 白熱灯 → オレンジ寄り
撮影環境によって生じる色の偏りを自然な状態に戻すのが基本ですが、演出としてWBをずらすことで独自の雰囲気も表現できます。



3. WBは「世界観をつくる起点」
自然なホワイトバランスを追求するだけでなく、”「どう見せたいか」でWBを決める」”という発想が、写真に表現力と独自性をつくります。
例:
- 少しオレンジ寄り → 温かく柔らかい空気感
- やや寒色寄り → クールで無機質、静寂な印象
WBは正確さだけでなく、「表現したい雰囲気」に合わせて調整することで、作品としての完成度が高まります。

4. HSLで色を部分的にコントロール
HSLとは?
HSLは以下の3要素からなります:
- Hue(色相):色の種類(赤、青、緑など)を調整
- Saturation(彩度):色の鮮やかさを調整
- Luminance(輝度):明るさを調整(特定の色のみ)
特定の色だけを調整できるのが強み
HSLは、空の青だけを鮮やかにする、肌の赤みだけを抑えるなど、ピンポイントの調整に優れています。
5. カラーバランスで写真全体の色の雰囲気を整える
HSLで色を細かく整えたら、カラーバランスで全体の印象を仕上げていきます。
- シャドウ:影に青や緑を加えると、静けさや冷たさが表現可能
- ミッドトーン:中間調に暖色を加えると、親しみや柔らかさが出せる
- ハイライト:明るい部分にオレンジや赤を加えると、夕焼けのような空気感に
この段階で 写真の“深み”や“奥行き” が完成します。


6. トーンは写真の“感情”をつくる設計図
色調(トーン)は、写真が持つ**「気配」「感情」「空気」**を作り出す要素です。
写真にどんな物語を乗せたいかによって、トーンは選ばれるべきです。
5つの代表的トーンと感情・表現の対応表
トーン名 | 主な特徴・色調 | 表現される感情・印象 | ポートレートでの印象表現 | 使用シーン・適した場面 |
ナチュラルトーン | 自然な彩度と明度、標準的なホワイトバランス | 信頼感、透明感、ありのまま、リアル | 今のこの人の表情をそのまま自然に伝える | ドキュメンタリー、記録写真、商品撮影、ライフスタイル系 |
ウォームトーン | 暖色系(オレンジ・赤・黄)、やや高めの色温度、柔らかい光 | 温かさ、懐かしさ、安心、親しみ | 温かい関係性や幸福な時間の記憶を映し出す | 家族写真、夕景、旅のスナップ、子どもの日常 |
クールトーン | 寒色系(青・緑・紫)、低めの色温度、都会的で静かな印象 | 静寂、孤独、冷静、スタイリッシュ | 少し距離感のあるクールで静かな印象 | 夜景、モード系ポートレート、建築、ストリート |
マットトーン | 彩度控えめ、コントラスト低め、黒を持ち上げた柔らかい質感 | 詩的、静けさ、内省的、やさしさ、余白感 | 記憶の中のような柔らかい静けさを感じさせる | フィルム風の記録、静かな日常スナップ、エモーショナル表現 |
シネマティックトーン | シャドウに寒色、ハイライトに暖色、映画的な色分離と重厚なグラデーション | 物語性、ドラマ、緊張感、深み | 背景に物語を感じさせるような雰囲気を演出する | 作品制作、ドラマチックなポートレート、広告、旅の記録 |



7. カラー調整における「引き算」と「足し算」の思考
引き算とは?
- 彩度を抑える
- 色数を減らして主題を引き立てる
- トーンを揃える
引き算は「抑える」ではなく「選び抜く」こと。削ぎ落とすことで伝わる世界観があります。
足し算とは?
- 彩度を加える
- 特定の色を強調して感情を際立たせる
- カラーバランスで雰囲気を盛る
派手にするのではなく、意味を持たせて“感情を加える” のが足し算の本質です。
なぜ“足し算・引き算”という考え方が大切か?
この考え方ができると、
- 「この写真、何かうるさいな」→ 色数を引く、彩度を引く=引き算
- 「この写真、少し物足りないな」→ トーンに深みを足す、赤を足す=足し算
というように、“印象ベース”で色をコントロールする意識が持てるようになります。
実際の操作に対応させると…
現像操作 | 足し算/引き算 | 具体例 |
HSLで彩度を下げる | 引き算 | 緑の主張を抑える(くすませる) |
色相を寒色に振る | 引き算(暖色を引いている) | オレンジ → 黄緑寄り |
WBで色温度を上げる | 足し算(暖色を足している) | 青みを減らし、赤味を加える |
カラーバランスでシャドウに青を乗せる | 足し算 | 映画風のトーンを作る |
補足 足し算と引き算は主観と目的によって変わることもある
例えば「青を足す」という操作も、
- 暖色系の写真に“青を足す” → 寒色の足し算
- 逆に言えば“オレンジを引いている”とも言える
つまり、足し算 or 引き算の考え方は、写真の“基準”に対してどう変化させるかで決まります。

8. まとめ:カラー調整は“自分を写す鏡”である
カラー調整は単なる補正ではありません。
それは**「あなたの視点」「感じたこと」「伝えたいもの」を色に変換する行為**です。
- 色を整えることで写真の完成度を上げ
- 色を操作することで写真に命を吹き込む
- 色を削ぎ落とすことで写真に余韻を残す
カラー調整は、あなたが何を大切にしているかが最も現れる瞬間です。
カラー調整で“自分らしさ”をつくる7つの極意
No. | 極意 | 説明 |
1 | 色を観察する力を養う | 自分が惹かれる色を見つけ、言語化する |
2 | WBは世界観の起点 | 「正しさ」より「どう見せたいか」で調整 |
3 | HSL&バランスで微細に作り込む | 色を“整える”だけでなく“演出”も加える |
4 | トーン=感情の設計図 | 写真の気配・温度・心象を色で決める |
5 | 統一感で“作品感”を出す | 自分の色世界を持つことで表現力が増す |
6 | プリセットは再現性の道具 | 自分の表現を保存・展開して安定感をつくる |
7 | 色は「自分を写す鏡」 | 色には心と思想がにじむ。自分の声を写そう |


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