
はじめに|カメラ選びの次の楽しみ
カメラを手にして少し慣れてくると、「もっと綺麗に撮りたい」「こんな雰囲気の写真を撮ってみたい」と思うようになりますよね。そのとき、次なるステップが“レンズ選び”です。
カメラが“体”だとすれば、レンズは“目”であり“心”。どんなレンズを選ぶかによって、写る世界そのものが変わります。
この記事では、初心者の方が最初の1本を選ぶときに知っておきたい基礎知識と、シチュエーション別おすすめレンズをプロカメラマン目線でご紹介します。
レンズ選びの前に知っておきたい「センサーサイズ」と焦点距離の関係
センサーサイズがレンズの見え方を変える
レンズの特性を正しく理解するには、まずカメラのセンサーサイズの違いを知ることが重要です。
フルサイズ(35mm)
- 一眼レフやミラーレスの上位モデルに多く採用される
- 自然な遠近感や豊かなボケ味が表現しやすい
- レンズの焦点距離が「表記通りの画角」で使える
APS-C
- 初心者~中級者向けのカメラに多い
- 焦点距離が約1.5倍に換算される(例:50mm → 75mm相当)
- 本体もレンズもコンパクトで扱いやすい
この「焦点距離の換算」を理解することで、ポートレートに最適な85mmレンズがAPS-Cでは約56mm相当になるなど、実際の使用イメージがつきやすくなります。

ズームレンズと単焦点レンズ、初心者に向いているのはどっち?
それぞれの特徴と使い分け方を知っておこう
ズームレンズの特徴とメリット・デメリット
ズームレンズは焦点距離を可変できるため、1本で多様な撮影に対応可能な万能レンズです。
メリット
- 被写体との距離に合わせて瞬時に構図を変えられる
- レンズ交換の手間がなく、旅先やイベントでも活躍
- 初心者でも失敗が少なく扱いやすい
デメリット
- F値が暗め=ボケ感が控えめ
- 高性能モデルは重く高価
- 描写力が単焦点に劣る場合も
向いている人
- 旅行や家族イベントなどで多様なシーンを撮影したい方
- 「まず1本で幅広く撮りたい」初心者の方
単焦点レンズの特徴とメリット・デメリット
焦点距離が固定の単焦点レンズは、自分の“足”で構図を探す必要がありますが、表現力は圧倒的。
メリット
- 明るいF値で美しい背景ボケが得られる
- コンパクトで高画質
- 被写体を引き立たせた“作品”のような写真が撮れる
デメリット
- 焦点距離が固定で構図の自由度が低い
- 慣れるまでは撮りづらく感じるかも
向いている人
- 写真表現を深めたい人
- ボケ味を活かしたポートレートやスナップが撮りたい人
ポイント
ズームレンズは「逃さない」ための武器。
単焦点レンズは「惹きつける」ための武器。
それぞれの特性を理解し、シーンに応じて使い分けるのが理想的です。

Scene 1|日常 × スナップ × 気軽さ:思わず撮りたくなる距離感
日常の何気ない瞬間を“ドラマチック”に切り取りたいなら、自然な画角の単焦点レンズがおすすめ。
おすすめレンズ:
・35mm(APS-C)/50mm(フルサイズ)
特長:
- 人間の視野に近い自然な画角
- 街歩きやカフェ撮影、家族写真などに最適
- 写真の基本「構図」を練習するのにも向いている
ポイント:
この画角(35mm/50mm)は、人の目で見た世界に近く、「日常をドラマチックに切り取る」ことに最適です。
強みは、構図の自由度が高く、どこでも気軽にシャッターを切れること。
弱みは、背景の整理や主題の明確化を自分で意識しないと“ただの記録”になってしまう点です。
だからこそ、“考えて撮る習慣”を身につける練習にもなる一本だと言えます。
Scene 2|ポートレート × 空気感 × 印象深さ:心を写す焦点距離
人物を魅力的に写したいなら、少し望遠気味の単焦点レンズが◎。
おすすめレンズ:
・85mm(フルサイズ)/56mm(APS-C)
特長:
- 背景が美しくボケて被写体が浮き立つ
- 表情や肌の質感まで丁寧に描写できる
- 自然な「心の距離感」での撮影がしやすい
ポイント:
85mmは「心の距離」を写すレンズ。
自然な表情を引き出すには、この焦点距離が最も信頼できます。
強みは、遠近感が自然に保たれ、肌のトーンや表情のディテールが美しく描かれること。
背景が大きくボケて、被写体の存在感を際立たせるのも魅力です。
弱みは、狭い室内では撮りづらく、自分と被写体との“適度な距離”を取らないと使いにくいこと。
でもその距離感こそが、ポートレートにおける「心の距離」を写す鍵になります。
Scene 3|風景 × 空間 × 奥行き:広がりをそのままに写したい
壮大な自然や建築物を収めるなら、広角レンズの出番。
おすすめレンズ:
・10-22mm、14mm、16-35mmなど
特長:
- 空間の広がりやスケール感をそのまま表現できる
- 構図次第で奥行きのある写真になる
- “余白”を活かした構図がカギ
ポイント:
広角レンズは、“空間の広がり”をまるごと写し込めるのが最大の魅力です。
空や地平線、建築物などスケール感のある被写体との相性は抜群。
強みは、奥行きや遠近感をダイナミックに表現できること。
ただし、弱みとしてはパース(遠近の歪み)が強く出やすく、構図が散漫になると“ただ広いだけ”の写真になりがちです。
主題と背景の整理を意識することで、一気にプロっぽい仕上がりになります。
Scene 4|旅 × 自然 × 機動力:どこへでも連れていける“相棒”
荷物を減らしつつ多彩に撮影したいなら、1本で完結するズームレンズが最適。
おすすめレンズ:
・18-135mm、24-105mm,24-200mmなど
特長:
- 広角から望遠まで幅広く対応可能
- レンズ交換の手間がなく、撮影チャンスを逃さない
- 特に旅行や子どもとの外出に便利
ポイント:
高倍率ズームは、旅先などで「レンズを交換せずに色々撮りたい」というときに本当に重宝します。
強みは、一本で広角から中望遠まで対応でき、どんなシーンにも即座に対応できる“撮影の自由度”が高いこと。
弱みは、F値が暗めでボケにくいことと、描写力が単焦点や専用ズームに劣る場面がある点。
でも「持ち歩く機材は少なくしたいけど、撮り逃したくない」人にとっては、“最も使われるレンズ”になりやすい一本です。
Scene 5|料理 × 小物 × 質感:ディテールが語り出す
ディテールを美しく切り取るなら、マクロレンズは欠かせません。
おすすめレンズ:
・60mm、90mmマクロ
特長:
- 被写体に極端に寄ってもピントが合う
- 質感・温度・雰囲気まで描写できる
- 作品性の高い1枚に仕上がる
ポイント:
マクロレンズは、被写体の“質感”や“存在感”を細部まで描き出す、まさに“寄りの魔術師”。
強みは、近づいてもピントが合い、花の繊細さや料理の温度感まで描写できること。
また、背景をふんわりぼかして、被写体だけに視線を集めることも得意です。
弱みは、被写界深度が極端に浅くなるため、ピント合わせに慣れが必要な点と、構図に工夫が求められる点。
でもそのぶん、「写真の密度」と「伝える力」は格段に高まります。
まとめ|最初の1本は“感性”に寄り添うレンズを
レンズ選びで大切なのは、**スペックだけではなく「自分が何を撮りたいか」**という視点。
たった1本のレンズでも、あなたの視点や表現が変わり、写真の世界が一気に広がります。
まずは“今の自分にフィットする1本”を選び、そこから次第に2本目、3本目へと、「あなたの世界を写す旅」が始まります。


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